朝に自分へ問う10のこと。
変えなくていい、ただ見るだけ

朝起きて最初の数分間に何を考えているかが、その日の体感をかなり決めます。けれど多くの人が、朝のうちから「今日もちゃんとやらなきゃ」「昨日のあれが残っている」「あれをやってこれもやって」と、すでに走り出しています。

本記事では、そんな朝に小さく置いておける10の問いをまとめました。答えを出すための問いではありません。気づくための問いです。気が向いたものだけ、心の中で繰り返してみてください。

これは、わたくしが10年以上、IT業界の研修現場で4,000回ほど人前で話してきた中で、参加者と一緒に何度も使ってきた問いの一部です。シリコンバレー流の自己啓発本に出てくるものでも、瞑想アプリの台本でもありません。日本の働き方・生活の中で、実際にいいなと感じてもらえた問いだけ残してあります。

科学的には、心理学者イーサン・クロスの『Chatter』(早川書房)にある「内なる声からの距離の取り方」とほぼ同じ枠組みです。やっていることは「自分を変える」ではなく「自分を観察する」こと。


問い1

今朝、起きた時に一番最初に頭に浮かんだことは何だった?

誰の顔だったか、何のタスクだったか、昨日の気まずい一瞬だったか、あるいはまったく何も浮かばなかったか。最初に浮かぶものは、その日の自分の関心がそのまま映ります。良し悪しは判断しなくていい。ただ、見たという事実だけを残します。

問い2

今日、少しだけ気にかかっていることはある?

「気になっている」と「悩んでいる」は別物です。前者は心の隅に小さな引っかかりがある状態で、まだ言葉にもなっていない段階。それに名前をつけてあげるだけで、頭の中の交通整理が少し進みます。

ある研修で、朝が苦手な方に「朝、何をしてからスマホを開きますか」と聞いたことがあります。返ってきた答えは「気がつくともうスマホを見てます」でした。多くの人がそうです。問いを立てる前に、もう外側の声が流れ込んできています。Ziranの問いは、その流入が始まる前に、自分の声を一瞬だけ拾うためのものです。

問い3

今朝の体は、昨日と比べて軽い、それとも重い?

頭の話ではなく体の話。良い悪いを採点しないでください。今日は重め、ぐらいでいい。重さの理由まで詰めると疲れるので、重さがある、ということだけ把握する。

問い4

今日の自分に、無理させたくないことが1つあるとしたら何?

朝の段階で「これだけは無理しない」を1つ決めておくと、夕方の自分が驚くほど助かります。会議の発言量でも、ランチの選び方でも、誰かへの返信速度でも。1つだけで十分です。

問い5

今朝、誰の顔が浮かんだ?

家族、同僚、しばらく会っていない人、もう会えない人。誰でも構いません。

研修で「朝のチェックインを5問やってください」とお願いすると、若手社員ほどビジネス的な答えを出そうとします。「目標達成のために」「成長したいので」と。本当はその朝に浮かんだのは、お母さんからのLINEに返信できていない、ということだったりします。後者のほうが、その日のパフォーマンスに直結します。

人の顔には、自分の今の関心がそのまま映ります。会いたい人なのか、心配な人なのか、まだ少しわだかまっている人なのか。誰だったかをそっと見るだけ。連絡を取る取らないは、また別の話です。


ここまで読まれて、もしかしたら「もう少し答えを出す形の問いがほしい」と感じられるかもしれません。でも、わたくしがこの10年以上の研修現場で見てきた限り、答えが出る問いより、答えが出ない問いのほうが、その人を長く支えてくれることが多いです。

朝の問いは、解決のための問いではありません。今日という1日に、自分という存在で着地するための問いです。


問い6

今日急いでいるとしたら、それは誰のため?

朝の焦りには持ち主がいます。自分のためなのか、誰かの期待のためなのか、なんとなくの空気のためなのか。持ち主がはっきりすると、急ぐ速度は同じでも、肩の力は少し抜けます。

問い7

今日は何を食べたいと、体が言ってる?

「何を食べるべきか」ではなく「何を食べたいか」。栄養バランスは別の人格に任せて、朝のこの瞬間だけは、体の小さな声を聞いてみる。塩気か、甘さか、温かさか。希望が出てこなければ、それはそれで構いません。

問い8

今朝の空を見た。見なかったなら、それでいい。

これも問いではなく、置いておく一文です。空を見ましょう、ではないところがポイントで、見なかった日を否定しないことのほうが、たぶん大事だと思っています。

ある研修で、朝の習慣について話していたとき、参加者の方から「毎朝コーヒーを淹れている自分を、丁寧だと思いたいけど、ただの惰性かもしれない」という言葉が出ました。それを聞いて、わたくしは「丁寧か惰性かは決めなくていい気がします。淹れている、ということだけ覚えておくのではどうでしょう」とお伝えしました。物事に意味を貼ろうとすると疲れます。事実だけ拾うのは、案外楽です。

問い9

今日やらなくてもいいことが、1つまぎれているかもしれない。

ToDoリストには、本当はやらなくていいことが必ず1つは混ざっています。誰かに見せるためのもの、惰性で続いているもの、断っていいのに引き受けたもの。見つけられたら見つける、見つからなければ今日は無理に探さない。

問い10

今日の自分に、ひと言だけ声をかけるとしたら?

最後の問いです。励ましでも、忠告でも、ただの「いってらっしゃい」でも構いません。声をかけられる側として、自分を1日に送り出すという感覚。これだけのことで、その日に起きる出来事の受け止め方が、ふっと一段下がる感じがあります。


10問、並べました。ぜんぶに答える必要はありません。むしろ、半分も答えが出なくて当然だと思っています。

朝のうちに、自分を一度だけ見て、それから1日を始める。変えるためではなく、見るために。それが、わたくしが長くかけて選んできた理由です。


気になった問いだけ、手帳の端に書き留めてみてください。


もし今、しんどいときは

弱さではなく、選択肢として残しておきます。


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